2022年10月4日火曜日

海の上の恋

彼とは海の上で出会いました。 私が大学生の頃、大学生が1ヶ月間豪華客船に乗り中国、シンガポール、オーストラリア、インドネシアを周り、各地でその国の大学生と交流をするというイベントがありました。 そこに彼は大学生をまとめるリーダーの一人として参加していました。 リーダーは大学院生でした。 私の班ではないリーダーでした。 船の上では2〜3日に1度、色々なイベントが開催されていました。 その中でディベート大会というものがありました。 テーマと肯定派か否定派かはあらかじめ決められており、それに合わせて自分達の意見を出し、闘います。 リーダーも自分の班以外の班同士のディベートに進行役として参加していました。 私のディベートの進行役は彼でした。 ディベート開始前、参加者が席につきました。 彼は一生懸命、参加者の名前を見ようと身を乗り出していました。 「この角度だと名前が見えない…」 「他のリーダーさんは誰も名前呼んでないから名前で呼ばなくても大丈夫ですよ。」 「…それじゃあ寂しい!」 ディベートが開始するまでの短い時間に必死で名前を見てメモをする彼。 その姿に私はキュンときて恋をしてしまいました。 1ヶ月間、ともに海の上で過ごし、時々話すことができました。 最終日、勇気を出して一緒に写真を撮ってもらいました。 告白はできませんでした。 海の上で始まって、海の上で告げることもなく終わった一夏の恋でした。